<グレタ・トゥーンベリさん「最大の脅威は行動を取らないこと」COP25演説全文>
スペイン・マドリードで開催中の国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)で12月11日、スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさん(16)が、気候危機をテーマにしたイベントのパネリストとして登壇。グレタさんの演説全文がさっそくアップされていますのでご紹介します。
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グレタさん「最大の脅威は行動を取らないこと」COP25演説全文(12月11日、毎日)
https://mainichi.jp/articles/20191211/k00/00m/030/319000c
真実を忘れてしまうから感情的な話はしない
こんにちは。1年半前、私は、必要ない限り話すことはしませんでした。でも、私は話す理由を見つけました。それ以来、私はたくさんのスピーチをし、公の場で話す時に注目を得るため、個人的なことや感情的な話から始めることを学びました。「私たちの家が燃えている」「私はあなたにパニックになってほしい」「よくもそんなことを!」などと言うのです。でも今日、私はそのようなことを言いません。皆がその言葉ばかりに注目し、真実を忘れてしまうからです。そもそも、私がこのようなことを言う理由は、私たちにはもう科学を忘れている時間がないからなのです。
1年ほど前から、私は「炭素予算」(気温上昇を一定のレベルに抑える場合に排出できる温室効果ガスの累積排出量の上限値)が急に減っていると何度も何度も訴えました。でも、いまだに無視されています。私は何度も言い続けます。昨年発行された、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書の108ページには、2018年1月1日からの二酸化炭素(CO2)排出量を420ギガトンに抑えると、67%の可能性で(産業革命前からの)世界の気温上昇を1.5度に抑えられると書かれています。もちろん、今その(420ギガトンという)数字はより小さくなっています。土地利用も含めて毎年私たちは42ギガトンのCO2を排出していますから。現在の排出量では、残りの炭素予算を8年間で使い切ってしまいます。この数字は誰かの意見でも、政治的見解でもありません。これは、現在の科学で得られる最良の数値なのです。
多くの研究者がこの数字は甘いと指摘していますが、これがIPCCによって示された数字です。この数字は、地球規模だということに留意してください。ですから、パリ協定を地球規模で機能させるために極めて重要な「公平性」については何も語られていないのです。つまり、豊かな国は公平性のために、排出ゼロを素早く達成し、貧しい国がそれを達成するのを手伝う必要があるのです。そうすれば、世界の豊かでないところに暮らしている人々は生活水準を上げることができます。この数字は、非線形の「フィードバックループ」(変化が変化を呼び相乗効果を生む現象)や「ティッピングポイント」(気候変動が急激に進む転換点)や大気汚染によるさらなる温暖化についてはほとんど含まれていません。しかしながら、多くのモデルは、現在は存在しない技術を用いて、数千億トンもの大気中のCO2を吸収することができるようになることを想定しています。おそらくそのような技術は決して出てこないでしょう。
(1.5度以内の気温上昇に抑える可能性が)67%というのがIPCCによって示された最も高い割合です。今、私たちが排出できるCO2量は340ギガトンも残っていません。なぜ、1.5度以下に抑えることがそんなにも重要なのでしょうか。なぜなら、たった1度でも上がれば気象危機で人々が死んでいくのです。それは科学が叫んできたことだからです。氷河や北極永久凍土が溶けるなど、不可逆的な(被害の)連鎖を止めるチャンスを得られるよう、気候を安定化させることです。ほんのわずかな気温の上昇も問題なのです。
これが私のメッセージです。これが私があなたに注目してほしいことです。あなたはパニックを全く感じずにこの数字にどう反応するのですか。わずかな怒りすら感じずに基本的に何もなされていないという事実をどう思いますか。警鐘を鳴らさずに、あなたはこれをどのように伝えますか。私は本当に知りたいのです。パリ協定採択以降も世界の銀行は1.9兆ドルを化石燃料に投資してきました。世界の二酸化炭素(CO2)排出量のうち71%に対しての責任を負っているのは100の企業です。G20加盟国の排出量は全体の約80%を占めています。世界の人口の裕福な10%が世界の半分のCO2を排出しています。一方、貧しい50%の人々はたったの10分の1です。私たちは本当に行動する必要があります。でも、ある人たちは他の人たちよりももっとやらないといけない。
2050年に実質排出ゼロなんて無意味
最近、ごくわずかな先進国が温室効果ガス排出量を減らし、何年もかけて実質排出ゼロにすることを約束しました。これは一見素晴らしいことのように見えるかもしれません。でも、目指すものはいいとしても、それはリーダーシップとは言えません。ミスリードです。なぜならこういった排出削減の約束の中に、国際航空や船舶、輸出入される製品・消費からの排出は含まれていません。でも、他の国で排出を相殺する可能性は含んでいます。これらの約束は、豊かな国がすぐに削減することを想定していません。本当は(温暖化の影響を抑えるために)ごくわずかな排出の猶予しかないのに。2050年に実質排出ゼロなんて無意味です。もし大量に排出する国が数年でも(大量)排出を続ければ、残された猶予なんてなくなってしまいます。全体像を見なければ、私たちはこの危機を解決することができません。包括的な解決策を見つけること、それがこのCOPでやらなければいけないすべてです。でも、その代わりに、各国が抜け穴について議論し、野心を引き上げることを回避する機会に変わってしまっているように見えます。
各国は取らなければいけない本当の行動に反する、賢いやり方を見つけてしまっています。例えば、排出削減量の二重計上や海外に排出量を移転すること。そして、野心を引き上げるという約束の話に戻ったり、解決策や(温暖化で起こってしまった)損失と被害に対する支払いを拒否したり。こういったことを止めなければいけません。私たちに必要なのは本当の徹底した排出削減です。でも、もちろん減らすだけでは十分ではありません。温室効果ガスの排出を止めなければなりません。気温上昇を1.5度未満に抑えるには、CO2を地中に閉じ込めておく必要があります。先送りして、耳に心地よい対策について話すことだけが進んでいます。私たちは良いことより害をもたらすようなことをしています。なぜなら、変化が必要なのに、まだ変化がどこにも見えないから。世界の指導者から何かを聞いているかもしれませんが、今必要な政治と言えるようなものは存在していません。そして、私は最大の脅威は行動を取らないことだと今でも思っています。本当の脅威は、政治家や最高経営責任者(CEO)たちが行動を取っているように見せかけていることです。実際は抜け目ない経理やクリエーティブなPR活動以外に何もしてないのに。
私は世界中を旅する幸運に恵まれてきました。私の経験では、(温暖化の危機への)認識が欠如しているのはどこでも同じです。少なくとも選挙によって選ばれるリーダーたちの間ではそうです。切迫感がまったくありません。私たちのリーダーは非常事態の時のような振る舞いをしていません。非常事態にあれば、人は行動を変えます。もし、子どもが道路の真ん中で立ち尽くしていて、自動車が猛スピードで走ってきたら、あなたは目を背けることができないでしょう。だって、落ち着いていられないから。あなたは即座に飛び出して、その子を助けるでしょう。切迫感なしに、私たちはどうしたらいいのでしょう。人々は本当の危機に直面していることを理解しています。もし今進行している事態にまったく気づかなければ、権力者たちにプレッシャーをかけることはしないでしょう。人々からのプレッシャーがなければ、私たちのリーダーは何もせずに逃げてしまいます。それが現状で、繰り返されています。
希望は人々から生み出される
3週間後に、私たちは新しい10年(2020年代)に突入します。私たちが「未来」と定義する10年です。今、私たちには希望の兆しさえ見えません。私は皆さんに言います。希望はあると。私はそれを見てきました。でも、それは政府や企業から来るものではありません。人々から生み出されるものです。今までは(危機に)気づいていなかったけれど、今気づき始めた人たちの中から生まれるのです。そして、一度気付けば、私たちは行動を変えられます。人々は変われます。人々は行動を変える準備ができていて、それこそが希望です。私たちには民主主義というものがあるのですから。そして民主主義は常に存在します。選挙の日だけでなく、あらゆる瞬間に。自由な世界を動かすのは世論です。実際、歴史を振り返ると、あらゆる偉大な変化は人々の間から起こりました。私たちには待っている時間はありません。私たちは今、変化を起こすことができます。私たち、それが「人々」です。ありがとうございました。