*米国の製造業ISM調査は10年ぶりの低水準に達した

*強気派は米中協議で製造業の苦境が緩和されることを期待

* フェデラルファンド先物価格、10月のFRB利下げ確率は80%

* アジア株は0.6%下落、欧州株は0.2%~0.4%下落

佐野秀幸著

[東京 2日 ロイター] - 米国の製造業活動が10年ぶりの低水準に落ち込んだことを受け、水曜日の世界株価は1カ月ぶりの安値に下落し、米中貿易戦争の影響が米国経済に波及しているのではないかとの懸念が広がった。

米国の経済成長が鈍化すれば、世界経済に残された数少ない明るい材料の一つが失われることになり、欧州が景気後退に陥るのが近いと見られているまさにそのタイミングで起こるだろう。

世界49市場を対象とするMSCIの株価指数は、前回0.83%下落した後、0.06%下落し、9月初旬に記録した安値となった。

欧州株は下落すると予想されており、欧州株式先物は0.2─0.4%下落した。

アジアでは、MSCIの日本を除くアジア太平洋株指数が0.6%下落し、オーストラリア株は1.3%下落、韓国株は1.5%下落した。日本の日経平均株価は0.4%下落した。中国市場は1週間の休暇のため休場となる。

香港のハンセン指数は前日の市場休場を受けて0.3%下落した。同指数は序盤の取引で最大1.2%下落した。火曜日、香港警察は10代のデモ参加者を射殺したが、これは中国統治下の香港で約4か月続く騒乱の中で初の実弾による攻撃となった。

香港の9月小売売上高統計は水曜日後半に発表される予定だ。

INGの首席アジア太平洋エコノミスト、ロブ・カーネル氏はメモの中で「ここではひどい数字以外何も考えられない」と述べ、香港の出来事を「絶望感が募る思いで」見守っていると付け加えた。

アジアの緊張に拍車をかけ、北朝鮮は週末に米国と実務者協議を開催すると発表した翌日の水曜日、少なくとももう1回飛翔体発射を実施した。

ウォール街ではS&P総合500種が1.23%下落し、4週間ぶりの安値を付けた。

米国製造業に関する最も注目されているデータの一つである供給管理協会(ISM)の工場活動指数が1.3ポイント低下し47.8と、2009年6月以来の低水準となったことを受けて売りが買われた。

50を下回る数値は製造業の縮小を示している。市場は同指数が50を再び上回ると予想していた。

この統計は、ユーロ圏の製造業統計が約7年ぶりの大幅な縮小を示した後に発表された。

チーフ・グローバル・ストラテジストの壁谷裕和氏は「製造業の見通しに関しては、来週予定される米中通商協議が全てだ。それがうまくいけば、今後数カ月間にISM統計がV字回復する可能性は十分にある」と述べた。大和証券で。

同氏は「つまり、今は米経済が一段と悪化することに単純に賭けることはできないということだ。全体的に見て、米経済は比較的堅調を維持しているという見方を変える必要はないと思う」と付け加えた。

低調な指標を受けてフェデラルファンド金利先物価格は急騰し、11月限では米連邦準備理事会が10月30日に利下げする確率が約80%織り込まれているが、データ発表前は50%強だった。

ドナルド・トランプ米大統領は火曜日、FRBが金利を「高すぎる」に維持しており、ドル高が米国の工場に打撃を与えていると述べ、再びFRBを激しく非難した。

ただ、FRBがトランプ大統領や金融市場が望んでいるほど性急に利下げするかどうかは別問題だ。

ストラテジストの梅沢俊文氏は「FRBが今月利下げするとは考えていない。FRBはおそらく12月に利下げしたいと考えているだろう。その時期の経済の強さを見て、対中関税が新たに発動されるだろう」と述べた。ピクテ・アセット・マネジメントにて。

同氏は「FRB政策当局者の間で意見が分かれていることを考慮すると、今月までに結論を出すのは難しいだろう」と述べた。

ちょうど火曜日、シカゴ連銀のチャールズ・エバンス総裁は、FRBは当面金利を維持できるが、経済成長が続けば今後数年間で若干の利上げの余地があると述べた。

ISM調査が米国経済が貿易戦争に耐えられるという見方に揺さぶりをかけたため、為替市場では米ドルが通貨バスケットに対して火曜日の2年ぶりの高値から下落した。

円は火曜日の安値1ドル=108.47円から1ドル=107.85円まで上昇した。

ユーロは1.0933ドルで、火曜日に付けた約2年半ぶり安値の1.0879ドルから反発した。

オーストラリア準備銀行が利下げし、雇用の伸びに懸念を表明したことを受け、前日には豪ドルは0.6713ドルで10年半ぶりの安値となる0.6672ドルを付けた。

金相場は堅調な米ドルを背景に、火曜日に付けた2カ月ぶり安値の1オンス当たり1459.50ドルから1オンス当たり1479.80ドルまで上昇した。

弱い米国経済指標を受けて原油価格は1カ月ぶり安値付近まで下落したが、米国の原油在庫の予想外の減少がアジアでの原油価格の反動につながった。

ブレント原油先物は火曜日に4週間ぶり安値の58.41ドルを付けた後、0.9%上昇して1バレル当たり59.42ドルとなった一方、米国産ウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)原油は1カ月ぶり安値の53.05ドルを付けた後、1.4%上昇して1バレル当たり54.36ドルとなった。

(レポート:佐野英之、追加レポート:香港ノア・シン、編集:Richard Borsuk、Richard Pullin)